私が住むマンションでの防災訓練があった。毎年1回の、マンション管理組合による総会にあわせての行事だ。
今年は洪水対策として「土嚢」でどう備えるか、各戸でヘルメットをどう備えておくか、が実例で示された。
ヘルメットについては、「折りたたみ式もあるから、それを使えば常備する場合に嵩張りませんよ」というだけの実物紹介だったので、別段言うことはない。折りたたみ式ではないごく普通のものを、すでに自宅にも市民科学研究室事務所にも備えている。
面白かったのは「土嚢」の方だ。マンションの共用部分が浸水しそうになる場合は、土嚢を積み重ねて、いくらかでもそれを防ごうというわけだが、その土嚢にかえて、「吸水土嚢」を用いてはどうかということで、今回その実物が紹介されたのだった。
土嚢は当然のことながらかさばるので、置き場所にも困るし、いざそれを必要箇所に災害時に移動させて備えるのも、重量が重量だけに大変だ。そこで、いざという時に、吸水性ポリマーを含んだ軽い袋を浴槽や水槽などに浸けて、思いっきり水を吸わせて(最終的に20kgになるものもある)、それを土嚢として用いる。それが「吸水土嚢」だ。
「これはいいかもしれない」と思いはしたものの、実際に防災訓練のその場で膨らませてみると、「いやいや、なかなかやっかいだぞ」という感じがした。
・吸水に時間のかかるものがあり―かなり早いものもあったがそれは高価な商品になる―、浸水被害が起こりそうだということを前もってきちんと予期して備える必要がある。慌てて備えるのにも使える、というものではない。
・分譲マンションの場合には、共用部分に対しては、幼児が遊びで使うビニールのプールに水を張って吸水土嚢を入れることになるが、各戸ではそれぞれに、浴槽などを使って吸水させることになる。しかし給水した後はその土嚢は非常に重くなるので、必要箇所まで運ぶのが大変。特に高齢者が増えてきているマンションでは、実質運べないというお宅も出てくることが多々ありそうだ。
・いったん膨らませてしまった吸水土嚢は、どこに捨てればよいのか。天日干して1週間程度で脱水するものもあるようだが、量と嵩がかなりのものなので、はたしてうまく干して処理できるのか。
というわけで、いろいろ難点がありそうなことがわかった。まあ、それがわかっただけでも防災訓練に参加した意味はあると思う。肝心なのは「水害がどう来そうか」をマンション全体で的確に把握していく、そのやり方だろう。それが確立しないと、土嚢は役立たせられない。