田中綾『書棚から歌を』(深夜叢書社2015)を読んだ。これは素晴らしい本だ。
これは一気読みしてはならない本で、一日2頁か4頁くらいがいい。
「短歌が引用されている本」のブックガイドなのだが、見開き2頁で1冊を取り上げて紹介し論じる、そのページが、紹介するその本のなかの一首から始まる。掲げた短歌の読み解きをてかがりに、その本から何が見えてくるか、訴えてくるかを掬い出す。短い優れた書評にもなっていて、その本を手にしてみたい、という思いに駆られる。
私は朝の入浴時に、浴槽につかって一首ずつを音読しながら、ゆっくり読み進めた。
取り上げられている書物はこちらの版元のサイトで一覧になっている。
知らない本だったのでこれから読んでみたい、と思わされる本がとても多いことも、私が読み応えがあったと感じる理由だろう。
帯に「短歌がいざなう〈今〉を考えるためのブックガイド 本の中に埋もれた〈歌〉に耳を澄ませば―戦後と戦前を往還しつつ、〈歌〉の〈訴え〉を探索する読書の旅」とある。〈歌〉の力を通して、それぞれの時代に生きる人間の姿に思いを至らせることになる、短歌のアンソロジーだ。