紅麹サプリ事件に思うこと

科学

6月9日夜に放送されたNHKスペシャル「追跡・“紅麹サプリ”健康志向の死角に迫る」を観た方は多いだろう。

でもどうだろう、この紅麹サプリ事件を受けて、「もうサプリは控えるようにしよう」という人もいるだろうけれど、「この事件は特殊で、今飲んでいるサプリでまさかそんなことは起こるまい」と思う人のほうが多いのではないか。

番組を観なかった人も、幸い次のサイトでほぼその番組全体の中身をたどれるようになっているので、読んでみられてはいかがかと思う。

“白衣の人は医師じゃなくモデル” 健康食品をNHKが独自調査

“紅麹サプリ”その後機能性表示食品制度見直しへ

小林製薬 “紅麹サプリ”問題 製造工程に潜む死角とは

機能性表示食品の問題は、次に述べるような「曖昧さ」を許容していることに由来するのではないだろうか。

①「効く」ことについて:
1)きちんとした証明がなくても売っても良い(企業側に譲歩した規制)
2)そのかわり、はっきり「効く」と謳ってはいけない(効能が実質ないことへの言及を封じる、逃げ口上として機能している:「誰も効くとは言っていませんから」)

②「効かないこと」について:
3)何の検証もなされない(服用する消費者の「選択」責任への問題のすり替え:「効かなかったとしてもそれは選んだあなたが悪い」)
4)消費者自身に検証する方法がない(企業の言うことを信じる他ない)

③副作用や健康被害を生じる恐れについて:
5)「食品」だからそもそもそんなものは考えにくいということが前提になってしまっている(企業も消費者も、生モノや調理モノよりも、清潔で安心できる、と考えている)
6)①や②の曖昧さ、今述べた「食品だから安心」の前提、といったことがあるために、副作用や被害は「想定外」になりがちで、それが発生した場合に的確に対処できない(原因の究明のための調査、被害の実態把握などに多くの不備や障害が出てきて、うまく進められない)

「効くこと」をきちんと証明して市場に出していくというやり方は、裏返せば、市販前の副作用のリスクのチェックや、市販後の(出るかもしれない)被害のモニタリングも、厳格に行うということに通じる。それが欠落したものを、極めて多くの消費者が持つ「手っ取り早く健康になりたい」という志向を付け込んで、販売できるようにしてしまっている(「あたかも薬であるかのように印象付ける」ことを許容してしまっている)ことが、この問題の本質ではないだろうか。

開発企業側が提出する「研究レヴュー」がおよそ証拠とはみなし難い、おそらく企業側にとって都合の良いデータだけを寄せ集めてきたものが大半であろうことが、今回の番組で示されていたが、このことは特に問題にされるべきだろう。(上記の記事「“白衣の人は”……」を参照のこと)

私自身は、今述べたような「曖昧さ」が多くの問題を生む恐れがあると考えるので、「機能性表示食品」は廃止したほうがよいと思っている。

食品はそもそも曖昧さを含むものだ。でも人工的に作った「食品」も曖昧なままでいい、ということにはならない。その区別が必要だろう。

皆さん、健康を維持したいのなら、もっとごく普通のあたりまえのことをふまえた、別のやり方にしましょうよ。

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