角川武蔵野ミュージアム

5月ももう終わろうという日に、所沢市にある角川武蔵野ミュージアムを訪れた。

私と私の連れ合いはともに誕生日が4月なので、一緒に住むようになってからは、誕生記念のお祝いを、ある一日に決めて一緒に行うことにしてきた。今年はどういうわけだかなかなか二人の都合が合わなくて、延び延びになっていたそのお祝いを、うんと遅れて今日5月30日に行うことになった。

「ここに行ってみるはどう?」と持ちかけられて、自宅からそれほど遠くなく日帰りで楽しんでくるには良さそうだっったので、東所沢駅から歩いて10分ほどの所にある角川武蔵野ミュージアムに行くことにした。

駅を出てしばらく歩くとすぐ目についたのは、人気アニメのキャラクターたちのイラストを描いたマンホールの蓋。会場までの道案内かと思えるほどたくさんあったが、じつはこれただの広告用イラストではなくて「日本初の発光するLEDマンホール」であるらしい。出かけたのは昼間だったので、光ってはいなかったが、夜に歩くとどんな感じなのだろうか? ちょっと落ち着かない気がしないでもない、のでは?……

目指すところは「ところざわサクラタウン」であり、そのなかにミュージアムがあるらしい。東所沢公園の真ん中の貫く道を進んでいくと、石版で貼り固められた巨大な建築物が現れる。これがミュージアムの建物だ。


その入口前の広場に、なんと、私が小さい時に初めて映画館で観ることになった映画「大魔神」の彫像が2️体立っているではないか(厳密には「初めて」ではなく二度目で、一度目は「ドラキュラ」の映画だったらしく、それを観た私はその夜高熱を出してうなされることになったと母親は言っていた。ちょっと、幼い子供にいきなり見せる映画としては趣味悪過ぎませんか、お母さん?) 思い出深かったので、その彫像の前で、大魔神のポーズをとってみた。

お目当ての4階のライブラリーはこんな感じで始まる。

もちろん、なかなか凝ったテーマごとに、一般の図書館ではまずお目にかからないような大型本や稀覯本も含めて、松岡正剛氏のセレクトだろうと思われるユニークな本が、単行本のみならず漫画や画集や外国語の本も入れ込む形で一挙にしつらえてあるから、それなりに面白くないはずはない。ただ、当然のことながら、その場で読み耽るわけにもいかず、「こんな本が世の中にはあるんだ」と気付かされて、それを手にとって眺めてみる……ということを、テーマコーナごとに繰り返すことになる。やはり、「どうしてこの本が選ばれているのか」の理由は漠然としてしか想像できず、おそらくある特定のテーマについて相当詳しい方なら、「いや、◯◯がないのはおかしいのでは?」と言いたくなるような場合も少なくないように思われる。

例えば、「数学を究める」と題したコーナーでは、こんな具合で5段に本が並んでいるが、大半の人にとって―もちろん私もそうした一人だが―これらの本で、何がどう究められることになるのかは検討もつかないだろう。あくまで「イメージ」なのだろうが、でもこれらの数十冊から百冊ほどを選んだ理由は、やはり何となく気になるし、知りたいと思うのだ。

でも、そんな本があることさえ知らなかった、いかにも興味深そうな本を次々と目にすることは、空間全体が醸し出す雰囲気と相まって、独特の遊泳感をもたらすことは確かで、その意味では一度は行ってみてもいいミュージアムと言えるだろう。荒俣宏氏の所蔵本や、彼が「我が師匠」と崇める紀田順一郎氏の著作が並んでいるコーナでは、私はお二人の著書を古書店で出会うたびに購入してきたこともあって、ずいぶんと楽しませていただいた。とりわけ驚いたのは「マンガ・ラノベ図書館」と題された一角で、今やライトノベルと称される書籍が「日本が世界に誇るエンターテイメント」の一翼を担っているらしいとの感触を得たのは、新しい体験だった。それらは日夜量産され、少年少女と限らない年代層にまで広く受容されているに違いない―その勢いが、所狭しとひしめき合って並んでいる本(中には10数巻に及ぶ大長編がいくつもあるように思われた)の背表紙からオーラのように発せられているのを感じてしまったのだった。

併設の「ダリ企画展」には寄らなかったが、「これは、だり(誰)だろう?」と遊べるコーナーもあったので、やってみた。

家に帰ってからは、私が料理して作った一品(赤ピーマン、オクラ、セロリ、エリンギをごま油で炒めてガーリックと胡椒で味付けしたもの)を二人で食べながら、白ワインでお互いの誕生日を祝して乾杯した。

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