ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)を昨年から利用し始めて、それ以前の自分の音楽鑑賞のスタイルではおそらくなかなか出会えなかっただろう、作曲家、演奏家、ユニークな創りのアルバム、そしてすでになじみのある曲の清新な演奏……に、毎日のように出会えるようになり、クラシック音楽との長いつきあいのなかでも、この年頃になって自分なりに新しい楽しみ方を発見できたことに、大きな喜びを感じている。そうした出会いの中から、どんな人にも楽しんでもらえそうな、アルバムを1つ紹介したい。たった30秒ではあるが、そのアルバムの各トラックの出だしを実際にネットで聴くことができるので、よかったらクリックして聴いていただければと思う。
パリ在住の作曲家の上林裕子さん。フランス音楽に詳しい人なら知っているだろう、2013年に亡くなった作曲家ジャン・ミシェル・ダマーズとの交流があり、そのダマーズと上林さんのフルートとピアノのための作品を収めたこのアルバムでは、なんと74歳のダマーズがピアノを奏でている(素晴らしく達者で繊細な演奏!)。フルートを奏でているのは京都市交響楽団の首席フルート奏者清水信貴さん。
上林裕子という、初めて知った作曲家の、フルート曲が本当に素晴らしい。私は訪れたことはないが、世界遺産にも登録されているイタリア・トスカーナのオルチャ渓谷の名にちなんだ『オルシアの物語』。まるで、果てしない草原の丘のうねりのなかで、心地よい風を身に受けている時のような気持ちにさせてくれる。
ダマーズ:フルートとピアノのための変奏曲/フルートとピアノのためのソナタ/上林裕子:オルシアの物語/道の記憶(清水信貴/ダマーズ)