高田敏子の詩と三善晃の音楽

文学

私の好きなラジオ番組の一つに、NHKFMの「ビバ!合唱」がある。

古い録音になるが、「合唱で聴く詩人の世界(11)~高田敏子」と題した回があった(2022年4月23日)。

私は三善晃の合唱曲に長年ずっと親しんできたので、この詩人の名前はうんと前から知ってはいたが、あることがきっかけで昨年、この詩人のことをちょっと調べてみたくなり、次の2つのサイトがあることを知り、熟読した。

生活者の詩―高田敏子さんの生涯

高田敏子の人と詩業(全53回)

特に後者の回想録は、当時学生だった筆者が高田敏が主宰する詩誌グループ「野火の会」に入り、高田宅に日参するようになるところから始まって、高田の死に至るまでの15年間をふりかえって、「人と詩業を明らかにし、恩師の詩塊を蘇らせたい」と願いから、師と仰いできた人の美しさ、優しさ、厳しさ、そして人間くささ……を深い愛情をこめて描いたじつに感動的な文章である。

上記ラジオ番組では、高田敏子の『嫁ぐ娘に』が番組の最後にとりあげられていたが、作曲された年(1962年)には、高田は48歳、三善は29歳。二人はどのようにして出会い、何を語り合ったのだろうか。高田は嫁いでゆく自分の娘に向けてこの詩を書いたわけだが、三善が作曲していたのは三善の妹さんが結婚することになった時期だという。

番組で紹介された他の6名の作曲家の作品もなかなか聴き応えがあったが、はやり、おそらく一番若書きであるはずの、三善晃の作品が一頭地を抜く素晴らしで、音楽のちからで、この平易でわかりやすい詩を、「平易でわかりやすい」だけと受け取られるままにしておかない、不滅の輝きが内側から発せられるものとしている。詩人にとって、これほど嬉しい贈り物があるだろうか。久しぶりにこの曲を耳にすることになって、そう思わないではいられなかった。

参考までに、この合唱組曲からの2曲の演奏の動画があったのでそれを記しておく。

あなたの生まれたのは (『嫁ぐ娘に』から)

かどで (『嫁ぐ娘に』から)

じつは最近、高田敏子の著書『詩の世界』(ポプラ社、1972年)を古書店で見つけて熟読し、中学・高校生向けに書かれた本であるとはいえ、これほど「詩」というものを手作り感を込めて真摯に等身大に語った本はないのではないかと、とても感動したので、三善晃との交流に改めて思いを馳せてみたのだった。

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