交換日記のこと(1)

思い出話

好きな異性と交換日記をしたことがある人は世の中にどれくらいいるのだろうか?

私はこれまでで2度、どちらも1年ほどにわたって、女性と交換日記を交わしたことがある。

ネットの時代になって、もうこんな習慣は世の中から消えてしまったように思えるので、記憶のなかの貴重な風景として留めておくために、簡単にその時の様子を記してみようと思う。ただし、2度目のものは本格的な悲恋としか言いようのないものだから、すでに過去のこととはいえ、まだ生きていらっしゃるだろう相手に迷惑がかかってはいけないので、1度目のものを述べるだけにする。

今ではメールのやりとりですましてしまうことになるが、そんな手段がない時代には、親しくなった男女が直接会わずに言葉を交わす手段は、電話と手紙に限られることになる。しかし電話は、高校生になるくらいまでは親と同居していることが多いだろうから、そう自由に使うわけにいかない(好きになった相手とはつい長電話になりがちなので、それだけ親からよけいに疎まれることになる)。

手紙も頻繁になれば、当然家人の目につくわけで、誰にも邪魔されず密かに言葉を交わすのは、中学生や高校生にとって、意外と難しかったのだと思える。

そうなると、同じ学校に通っている、といった物理的に接近する機会が多く持てる環境にいる限り、「交換日記」は、ほかの人の目につかないように手渡しできさえすれれば、他人の目に煩わされずに親密に文通できる一番確かな方法ということになるだろう。

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