交換日記のこと(2)

思い出話

私が高校1年生の時に2学年下のAさんと交換日記を始めた経緯はよく思い出せないけれど、私が中3の4月からある委員会の委員長を務めた際に、全学年各クラスから1名ずつ選出されるその委員であったAさんと出会うことになった。知り合って2ヶ月ほどしてお互い惹かれあうようになったと思う。放課後の人のいない教室の隅で目立たないように二人きりで言葉を交わすなどしていた。そして学年が変わるのを機会に―中高一貫だったから同じ学校に通うのだが校舎の棟が別になる―Aさんから交換日記を提案された。その交換日記のタイトルは私がつけて、英語で『Let’s find out about …』というもので、杏色をした表紙のA4判の大学ノートを使った。2学年下のAさんは、誰もの目を引く華美なところがあったわけではないけれど、誠実で、落ち着いていて、伝え聞くところでは成績も非常に優秀だったようで、その学年ではきっと最も信望の厚かった生徒だったのではないかと思われる。話しているうちに、いろいろなところで気が合うことがわかり、委員会の仕事も、個人的にいろいろ助けてくれるようになった。

大変興味深いことに―そして当時の私にとってはかなり不可解でもあったが―Aさんには「お付き」のようにいつも寄り添っているBさんという別の女の子がいて、おそらく二人は心を許しあった親友だったのだろうか、Aさんに絶対の忠誠を誓っていると言えるくらいに、いつも影のように寄り添い、Aさんをいろいろ助けているようにみえた。当然のことながら、そのBさんだけは、私とAさんが親しくなって、誰もいないところで話したりしている、ということを知っていたのだろう。交換日記をしていることを誰にも知られたくない―という私とAさんの思いに応えるべく、その子はなんと伝令役を引き受けることになって、土曜日の午後に校内の図書館に行くことが習慣になっていた私に、「では、上田さんの座っている所に私がそっと忍び寄って手渡してあげましょう」ということになり、その使命(?)を忠実に果たしてくれた。一言も口を利かず眼だけでサインして―「誰にも見られないようにしていますよ」という緊張感を持った強い眼差しが印象的だった―手渡してくれた。

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