シェイクスピア劇場の思い出(1)

文学

かなり昔のことだが、NHK教育TVで「シェークスピア劇場」という番組をやっていた。

調べてみると、BBCシェイクスピアの37本の戯曲全部をTV用に映像化して、1978年12月から1985年4月にかけて放送したのを、NHKが字幕をつけ、吹き替えを行って、1980年11月から1987年3月までの期間に全作品を放送したものだ。

私が大学生で下宿をしていた頃とほぼ重なる時期なのだが、とにかく大きな期待を抱いて観た第1回目に魅了されたので、「よしすべてを観てやろう」と決心し、実行した。戯曲を予め読んでから、と思いはしたが、なかなかそれが果たせずにいた。

ところが、幸か不幸か、在学中に大学の体育の時間に左膝(左側副靭帯断裂)の大きな怪我をしてしまって、1ヶ月半ほど入院と自宅療養を強いられることになった。

(これは、指導教官が不用意に学生たちに行わせたある運動と、その運動をしていたガタイの大きな男子学生が全力疾走するなかでバランスを崩してつんのめり、私の左膝めがけて体当りした結果の怪我だった。激痛が走ったが、「捻挫だから大丈夫」などと軽く私をあしらった教官が大いなる判断ミスを犯していたことになり、その言を信じて近所の整形外科でその旨を伝えたこともあって誤診されてしまい、事故から一週間もすると完全に歩行が不可能となってしまった、という情けない話だ。私が休学を余儀なくされることになった際の、責任を取ろうとしない大学側のあまりにも官僚的な不誠実な対応に、絶望的な気持ちになり、大学を辞めようかとも考えたほどの、嫌な出来事だった。)

その療養中はほぼ寝たきりで過ごさねばならなかったから、できることと言えば読書くらいだった。そこで思い切って、当時白水社から出ていた小田島雄志が個人全訳した『シェイクスピア全集』を購入し、「一日一作」で読み通すことにして、実行した。専攻は理系なのだから、読み通すのなら別の本を……という声も聞こえてきそうだが、当時の私にはこの「シェークスピア劇場」の魅力はとても大きかったのだ。通読した―場合によっては同じ日に同じ作品を2回も3回も読んだ―37日間がどれほど楽しい日々だったかは、語り尽くせない。

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