シェイクスピア劇場の思い出(2)

文学

この通読経験があったことで、その後観ることになった「シェークスピア劇場」の作品が格段に面白く感じられるようになったことは言うまでもない。

今となってみれば微笑ましいエピソードもある。

当時、私としては後にも先にもこれきりと言える、いわゆる「おっかけ」をしていた、お気に入りの女優さんがいたのだが、その人が、『終わりよければすべてよし』のヘレナ役の吹き替えで出演しているのを画面から流れる声をとおして気付かされ、小躍りしたことがある。

(その女優さんの名前は俳優座の香野百合子さん。『頭痛 肩こり 樋口一葉』『ロミオとジュリエット』『なよたけ』など、この人が出演する舞台は2、3年の間だけれど全部観に行った。)

また、ある機会に知り合った年下の女学生さんのことが好きになり、なんとか初デート(?)にこぎつけた際に、おしゃべりするなかで、彼女が英文科に在籍して演劇も好きだとわかったので、つい、いろいろ蘊蓄を語ろうと「シェークスピアでは何が好き?」と私の方から切り出した。相手は「ウーン」と考えている様子だったので、「僕は『十二夜』だな。だってあのヴィオラが……」と熱心に話したはいいものの、「ヴィオラじゃなくて、ヴァイオラでしょ」と釘を刺されてしまった……。

ところで、このシェークスピアの37作品を全部読む・観るという経験が何の役に立ったのだろうか、と考えてみると、一つだけ具体的に挙げることができる。

それは、ひょんなことから担当することになった、演劇の舞台づくりのお手伝いをとおして、生かされたように思えるのだ。

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