ある旅行好きの知人がいる。
その人のことを、「(仕事柄もあるとはいえ)この人、いったい年に何回旅行しているのだろう」と羨ましくも、多少訝しく思ったりする。
仮に「日帰り」は除くとして、「1泊2日」以上の旅行はそれなりに金と時間がかかる(交通費と宿泊費だけで済まないことも当然多いだろう)。でも、逆に言うと、今この時点で費やすことが可能な金と時間さえ確保していれば、その範囲で自由に、旅の中身を組むことができる。特に一人旅の場合はそうだろう。一人旅に慣れると、その身軽さ、旅程を組む自由度が手放せなくなって、次々と魅力的な各地の見どころを制覇していきたくなるのではないか。旅行に「病みつき」になる人、「趣味は旅行です!」と言いふらさずとも密かに多くの時間と金をそれにあてている人は、ともて多いのではないか、と想像する。
こんなことを考えるのも、(日帰りを除くと)年に1回か2回くらいしか旅行に行かずに長年過ごしてきた自分を振り返って、海外旅行を含めて、行った先での思い出がやはりとても心に残っているものが多いだけに、「もっといろいろ旅行をしておけばよかったのになあ(それができるくらいにある程度のお金と時間があればよかったのになあ)」という思いが頭をもたげてしまうからだろう。
情けないか、ラッキーととるかは、人によって違うだろうが、これまでに訪れた海外の国々は、1件を除いてすべて(助成金やあてがわれた派遣費などを使った)調査や研究発表や国際会議がらみでの訪問先だった(欧州の数カ国、ハワイ、韓国などアジアの数カ国)。そうでない1件も、自費とはいえ、「市民研エコツアー」で訪れた英国だから、調査と言えないこともない。調査の合間をみて、行ける範囲で様々な施設や名所を訪れたが、どれも非常に楽しいものばかりだった。国内の泊りがけの旅行もはやりその多くが講演や調査や市民研企画の「エコツアー」的なものに関わってのものだ。純粋に自分(もしくは連れ合いと一緒で)の楽しみのためだけの旅行がいかに少ないか、これはもし、統計データをとってヨソ様と比較すると、驚くべきことになるのではないか……。
反省と自戒をこめて、一生のうちに訪れておいてもいい所を訪れることができるように、この先の人生設計をしなくては、と思うのだが、はたして本当にできるのか、どうか。