ある特定の曲や演奏を毎年決まった時期に必ず聞くという習慣のある人は、きっと多いだろう。私の場合は、次の2つになる。
クリスマスの時期には、バッハのミサ曲ロ短調をまず聴き、その後に、クリスマスにちなんだお気に入りの声楽のディスク―ジャズやポップスも含めて合唱が多い―から数枚ほどを選んで聴く。
そして夏のお盆の時期には、三善晃の『レクイエム』『詩篇』『響紋』の”反戦”三部作を聴く。
これは、一般受けするクラシックの「名曲」の均整のとれた様式感と旋律の美しさからは、およそ対極にある、史上空前のカオス的な激烈さをもった音楽だ。
戦争で殺された者たちへの「鎮魂」とはいったい何なのか―目を見開いて、戦争で殺し殺されることとはどんなことなのかに深く思いをいたし、それをくぐり抜けようともがくこと、死者たちの「声」を聞き続けること、ではないのか。
この三部作は、そのようなぎりぎりのところに、私たちを連れ戻そうとする力をもった、肺腑をえぐる音楽だ。
先日放送されたNHKスペシャルで特攻隊とサイパン玉砕を取り上げていたが、おそらくご覧になったどの人も、「何が日本人をこの集団的狂気とでも言うべところにまで追いやってしまったのか」「国家と社会が狂っていこうとする時、はたして自分はどこまでそれに抵抗できるのか」を考えないではいられなかっただろう。
“一億特攻”への道 〜隊員4000人 生と死の記録〜
“最後の1人を殺すまで”〜サイパン戦 発掘・米軍録音記録〜
三善晃の三部作とともに、この2番組から、今年のお盆の時期に、戦争について自分なりに踏み込んで考える機会を与えてもらった気がする。
三善晃の「反戦三部作」は、手短な解説を付けて紹介している次のラジオ番組が、8月24日(土)までの期限で聴くことができる。
また、2023年5月12日に東京文化会館大ホールでの東京都交響楽団の演奏が、YouTubeで公開されている。それを紹介したある方のブログ記事を引いておく。