地図のない旅は不安な旅であろう。だが、驚きと発見のいや増す旅であるかもしれない。
地図をたどる旅も、むろん地図から読み取れる以上のものをこの目で見出しこの身体で感じ取ることになるわけで、何も驚きや発見が損なわれているわけではない。だが、地図のない旅、道なき道をゆく歩みは、挑戦の気概(裏返して言えば、迷い込み失敗することへの覚悟)なしには行い得ない。未見で未聞の世界に足を踏み入れる緊張感こそが、開拓者としての自分に与えられる報酬と言えるのではないか。
世間に評価されなくても、あるいは顧みられなくても、我が道をゆこうとする者は、学問や研究の領域に限らず、どんな領域の世界にもいる。
地図のない旅の旅人として生きる―少なくとも自分の人生で手掛ける何らかの領域においては、その姿勢を貫いていければと思う。お決まりのコースを歩むな、他人や世間からのお決まりの認知や評価を求めるな。自分にだけ描ける新たな地図がありそうに思える限りは。