日本人の一人として、劣化した日本の姿の数々をみて、それをいくらかでも改善するための行動を自分からは何もしないのに、その姿をあげつらう、ということはしたくないのだが、その行く末を想像するだけで、やはりどうしても冷ややかに、半ば絶望的な無力感を覚えつつ、批判せざるを得ない、現在進行形の公共的大事業が2つある。
リニア中央新幹線と大阪万博だ。
前者は、東日本大震災が起きて間もない2011年5月に、国交省が認可を下したというニュースを聞いて、「エッ、ほんとに」と我が耳を疑ったことをはっきりと覚えている。どう考えても合理性に欠け、リスクばかりが大きく、何のメリットもない事業を、国が認可するはずがない、と思い込んでいたからだ(※)。
※以下に収められている講演(2013年)でもそういう話をしたことがある。
https://www.shiminkagaku.org/wp/wp-content/uploads/30201020161128.pdf
でもそうではなかった。以来10年以上が経過しているが、「夢の超特急」幻想にしがみつくこと、病膏肓に入るのレベルに達しているとしか思えない。無惨な未来図―乗客数が予想をはるかに下まわって破綻する、いやその前に、トンネル工事の事故が頻発して頓挫する―がますます色濃くなってきている、と言っていいのではないか。
止めるなら今だ、の思いが強くなるばかりだ。
同じことは大阪万博にも言える。(大企業に捌いてもらう分以外の)チケットがさっぱり売れない事態は、国民からこの万博はもう見限られているのだ、ということを示している。この事業の推進者たちは、ここに至って、万博事業の失敗は避けられないことがわかりつつもそれを口にできず、「別に私にその責任があるわけではないのだから」と、こうした事業によくある”無責任体制”の隠れ蓑に身を潜めようと汲々としているのではないか。
以下の動画では、その無責任体制の一端が具体名を挙げて示されているし、「これ、正気か?」と疑いたくなるような身勝手でチンケなコンセプトのパビリオンが作られようとしていることも紹介されている。関係者はほんとうに恥ずかしくないのだろうか?
止めるなら今だ、と改めて強く思う。