懐かしの一編と再会

本の話

昔読んでとても印象に残っている本ではあるけれど、今それを読み返す必要もないしわざわざ読み返したいとも思わない本は、誰にとっても幾冊もあるだろう。でも、絶版になって久しいなどの事情で、今は手に入り難くなっているようであるその懐かしの本が、なんと古書店で100円か200円の値段が付けられて置いてあったら、あなたはそれを買ってみたくならないだろうか。

最近そんな「再会」をして買ってしまった本に、ヘルマン・ヘッセの 『少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集』(岡田朝雄・訳 草思社)がある。

この標題となった短編小説がどんな話であるかは記さないが、「ああ知っている」という人は多いのはないだろうか。確か国語の教科書で出会った、そう、蝶々採集の話だ。この本の「訳者あとがき」によれば、じつに64年間も中学校の国語教科書に採択され続けてきた(今でも4社が掲載)という。

ところで、この新年から「一日一話のペースで1年で全巻を」という目標を掲げて読み始めた『ちくま文学の森』全16巻―古本屋で1冊100円か200円で買い集めて昨年末にやっと全巻揃えることができた―の第1巻の第5話目が、なんと上記の本に2つ目として収められている短編と同じであることに気づいた。

「ラテン語学校生」という作品だ。ヘッセのストーリテリングのうまさが堪能できる、初恋を描いた名品だが、年頭に生じたこの偶然の一致をちょっと面白く感じたのだった。

◆今日のおすすめ
皆さんは国語の教科書で出会った作品で忘れられない一編は何かあるだろうか。そのうちの一つとして挙げるだろう人が多いのは、やはりこれかもしれない。
『少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集』(岡田朝雄・訳 草思社)

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