恋情と結ばれた音楽

思い出話

実らなかった恋愛を人は他人に語りたがらないものだ。でも、実らなかったがための、つれなくも心残りするその程度は様々であれ、実ることへの期待を秘めて身を焦がしていた時期に、その想いと深く交錯するある特定の音楽があったとすれば、時間を経て、その恋情は冷めてしまったとしても、その音楽を聴けば、恋情を抱いていたその時の自分の心の高揚が蘇ってくる―そうしたことは誰にでもあるように思われる。

私には、幸か不幸かそのような曲がいくつかあって、それを聴くと、その時の自分が相手に対して抱いていた想い ―それが実るかどうか不安ながらもやはり幸福感に包まれていた― を蘇らせ、それが刻まれた特定の場所・情景のなかに自分が立ち戻ってしまうような感覚に襲われる。

そのいくつかの曲を並べてみよう。

カプースチンのピアノソナタ第1番の第1楽章。S駅で降りて、相手に会いに行く道すがら。S駅を降りるたびに思い出す。

カプースチン:ピアノ作品集(オズボーン)
「カプースチン:ピアノ作品集(オズボーン)」(レーベル: Hyperion)の試聴、全曲再生ができます。収録曲:ピアノ・ソナタ第1番「ソナタ・ファンタジー」 Op. 39 / 24の前奏曲 Op. 53 (抜粋) / ピアノ・ソナタ第2番 ...

波多野睦美が歌う「アルフォンシーナと海」。相手のお父様ががんで余命短しの時期に、喫茶店で会った際、相手が急に泣き出して、「どうにも支えになれていないのだ」と痛感させられた場面。故郷に戻ると聞き、それでこのCDを贈った。(CDのジャケットのデザインも気に入ってもらえるのでは、と期待した。)

Alfonsina Y El Mal
このCD、聴いて良かった……歌とギターによる、シンプルでアルカイックで、ほのかに… Ponta Point available! | Alfonsina Y El Mal | JP Edition | CD | WPCS-11475 | H...

フォーレの夜想曲の第1番から第3番あたりまで。相手に会えないのがあまりに辛くて、無理やり用をこしらえて相手に(勇気を振り絞って?)電話して会ってもらった、その電話するまでの間に聞いていていたリビングの窓際。

フォーレ:夜想曲第1番 - 第13番/舟歌第1番 - 第13番(アムラン)
「フォーレ:夜想曲第1番 - 第13番/舟歌第1番 - 第13番(アムラン)」(レーベル: Hyperion)の試聴、全曲再生ができます。収録曲:夜想曲第1番 変ホ短調 Op. 33, No. 1 / 夜想曲第2番 ロ長調 Op. 33, ...

タッド・ガーフィンクルの「祈・望・幻・想」というCD。T駅近くに住んでいる相手に、時々会うことができて、そこに向かう車中で、柱にもたれて窓から夕方の景色を眺めながら、ウォークマンで聴いている姿。

Prayers Wishes Illusions, MA Recordings

ラターの「羊飼いの笛のキャロル」。F駅近くのビルの屋上で、相手にこのCDをプレゼント。小さい息子さんと一緒に遊んだその情景。これについては以前このブログで触れた。
https://uedaakifumi.shiminkagaku.org/20231029-2/

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