カステルヌオーヴォ=テデスコを聴く

書物

新譜として出た、カステルヌオーヴォ=テデスコの弦楽四重奏曲(全3曲)を聴いて、心がなごんだ。

素朴でおだやかで、田舎の雑木林や田園のなかを自転車をこぎながら風に吹かれているような爽やかさがある。

多くの人がそうであると思われるが、私もまた「ギター協奏曲第1番」(1939年)でこの作曲家に出会った。同時期に作られた、あまりにも有名なロドリーゴの「アランフェス協奏曲」と双璧をなす、ギター協奏曲の傑作だ。その曲が大好きになった私はそれ以来、少しずつ他の作品も聞くようにしてきた。

彼を有名にした名作「ギター協奏曲第1番」の全曲の演奏(30年ほど前の村治佳織のギター)

1895年フィレンツェ生まれ。1938年には、ムッソリーニ政権による反ユダヤ主義の迫害を逃れ、アメリカへ移住して帰化している。米国籍になってからは、映画音楽にも力を入れ、200本以上の映画に曲を提供したという。そのなかには、『名犬ラッシー』(1943)『ガス燈』(1944)なども含まれている。『スーパーマン』(1948)や『バットマンとロビン』(1949)など、TV番組の楽曲も作っている。また、後の映画界の大御所となるヘンリー・マンシーニ 、ジェリー・ゴールドスミス 、ジョン・ウィリアムス、ニーノ・ロータらが弟子筋にあたるというから、なんともすごい。

このことからも想像できるように、カステルヌオーヴォ=テデスコの音楽は、いわゆる「現代音楽」が持つ難解さや刺々しい頭でっかちな感じはまったくない。親しみやすい映画音楽のような、寄り添い包み込む暖かさがある。

私は先日、「中国の漢方薬のためにロバが殺されている」と題したニュース紹介を市民研チャンネルで行ったが、

動物園でしか目にしたことのないこの動物のことがともて気になるワケの一つは、ヒメーネスの『プラテーロとわたし』に馴染んでいたからだと思う。

この全部で138編の詩のなかから28編を選んで、カステルヌオーヴォ=テデスコはギターと朗読のための作品を作っている(1960年)。

決して童話風の作品というわけではないのだが、一つ一つの言葉に(翻訳であったとしても)独特のきらめきがあり、そのきらめきを通して、人と動物、人と自然の交感が、田舎のゆったりした時の流れが、しみじみとこちらに伝わってくる。ギターと朗読で奏でられる作品として最高に美しいものではないだろうか。

ギター単独での演奏もあり、もちろんそれも味わい深い。幸い、巨匠セゴビアによる録音が聴ける。


このなかの、「子守歌」の哀しくも美しい調べはどうだろう(15分26秒から)。

私が一番なじんでいるのは次の新しい演奏(冒頭部分試聴可)。

カステルヌオーヴォ=テデスコ:プラテーロと私(リョリョス)

朗読は、各曲の冒頭部分を視聴できるものとしては次の2種があるけれど、英語のものはちょっと雰囲気が合わないように思う。それに比べて、スペイン語(原語)のものは素朴な感じが伝わってきて素敵だ(13曲しか収めていないのが残念だけれど)。

カステルヌオーヴォ=テデスコ:プラテーロと私(オヴァーディア/セグレ)

カステルヌオーヴォ=テデスコ:プラテーロと私(英語ナレーション)(フォックス/ワインバーグ)

上記のセゴビアの動画を流しながら、詩集を片手に朗読してみる―声優さんと限らず、声で何か演じることに関心のある方は試してみてはいかがだろうか? ほんとに素敵な詩と音楽なのだから……。

私はまだ聴いていないが、波多野睦美(ソプラノ、そしてなんと詩の翻訳!)と大萩康司(ギタリスト)による全曲盤がある。その紹介をした動画を紹介しておこう。

【日光ミュージックブックカフェ】詩画集 プラテーロとわたし|ゲスト 波多野睦美

時間をみつけて、このCDをゆっくり聴いてみたいな。

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