まち歩きの魅力と可能性

まち歩き

市民科学研究室の活動で、今後よりいっそう重視していくことになるものの一つは、「まち歩き」ではなかろうか。

文京区に事務所を構えたのは2003年からで、最初は本郷に7年、次に千駄木に7年、そして2017年からは今の湯島に、と移ってきた。観光ガイドに記されているような名所旧跡や歴史的建造物だけでなく、事務所の周辺1キロくらいの範囲であっても、隈なく歩いてみると、何かわけありげな町並み、建物、土地の起伏、坂道や路地、暗渠、地名の由来を記した標識、古い銭湯、職人さんが住んでいることを思わせる玄関先に置かれた工芸品などの品々……。空き家も増えて、のっぺりとした何の風情も感じさせない中規模マンションばかりが増えているなかでも、この地域にはまだ、江戸時代から続いてきただろうことを感じさせる光景が、歩きながらじっくり眺め渡せば、しっかりと目に入ってくる。

そんな経験を重ねてきたので、「まち歩き」は楽しいし大事だ、という感覚が私の中に次第に根付いてきたのだろう。

ことあるごとに収集してきた江戸・東京の「まち歩き関連本」も、ずいぶんな数になった。古いものでは『江戸名所図会』から始まって、今のカラーの新書版での東京・お散歩ガイドの類まで、古地図や地質地形の解説本、神社仏閣の由来を記した歴史書から、路上観察のガイドや博物誌、果ては地理・歴史の「謎解き」本や怨霊退散(!)本まで。いや、どれも面白く、こうした本を片手にまちを歩き回ることほど、金もかからず、好奇心を満たしてくれて、かつ健康にもいい、という過ごし方はないだろう。

まち歩きの達人ともいえる友人にも協力してもらって、文京区内を歩き回るイベントを集中的に組んで、延べ人数にすれば、それなりの数の人に参加してもらったこともある。以下はそのことを受けて、まち歩きの可能性について書いてみた文章だ。

「まち歩き」を中核にした総合イベントの可能性(その1)

「まち歩き」を中核にした総合イベントの可能性(その 2)

今、「まち歩き」の新しい試みとして2つのことを考えている。

ひとつは、GPSと連動した音声ガイドアプリを使って、住民が自分の住まうまちの魅力を発見して、それを皆で集合的に音声データとして積み上げていって、「(常に更新される)まち案内の音声ガイド」を作れないか、というもの。市民研の「音声ガイドでまち探索」はそれを狙っている。

もうひとつは、「まち歩きブックトーク」だ。面白いコースを決めて、参加者を募るのだが、参加者にはそのコースのどこかの何かにひっかかってくる、面白い本を自分で選んで持ってきてもらうのだ。その該当する地点に来たら、本人がその本の一節を朗読し、皆で語り合う。そんなことを繰り返しながらコースをたどっていく、というイベントだ。

どうだろう、これ面白くないですか?

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