ラリー・ゴニックという異才

書物

漫画による学習書あるいは入門書は、戦後各国でいろいろな分野のものがかなりたくさん作られてきたように思う。私も、韓国、フランス、米国など数えてみれば数カ国の言語でその原著が書かれた、学習漫画(ただし「学習」でないノンフィクション漫画を含む)をそれらの翻訳で持っている。

日本で一番よく知られているのは、各社から出ている(7社もあるらしい)日本史の学習漫画シリーズだろう。それらが出る以前にも確か「学研」から出ていた科学学習漫画があったことを私は覚えている(そのうちの「人体」を扱った一巻が小学3年生くらいだった私にはとてもなく面白かったようで、それが生物学に興味を持つきっかっけになった)。物理学の領域では、もうだいぶ前に絶版になった『アトム博士の◯◯』という素晴らしいシリーズ(全11巻)があって、そのうちの6巻を古書店で手に入れて、私は所有している。

大人向けという点で、世界中に翻訳が出回ったのは(日本語のオリジナルのものも多数含まれているが)、おそらく現代書館から出ている「フォー・ビギナーズ・シリーズ」だろうか。この目録をみて、「そういえば、これ、あったな」「これ読んだことあるな」という人は相当多数いるだろう。

これらの学問・思想の世界を様々なテーマで漫画で入門書として描いた作品を、総覧することができたら、そのこと自体からいくつもの文化史的に興味深い研究の切り口を見いだせるのではないかと思われる。

もし総覧して地図のようなものを作ったとしたら、そのなかでもとりわけ異彩を放つ学習漫画の大家がそびえ立っていることに気付くだろう。

その名は、ラリー・ゴニック(Larry Gonick)。1946年生まれのアメリカ人の漫画家だ。

日本語の翻訳も18冊が出ているが、それは彼の仕事の一部でしかない。「科学」を中心にして、歴史、経済、環境問題などに及ぶ驚異的な幅広さがあること、また、私が読めた限りの数冊について言えることだが、数ページおきに出てくる皮肉を効かせたユーモアがなんとも楽しいのが、大きな特徴といえる。歴史を徹底的に勉強した人だからこその、数学や物理や生物学の解説のなかに興味深い人物エピソードなどが随所に織り込まれていて、飽きさせない。ゴニック氏が思想的にも鋭い現状批判を辞さない人であることは、ラインナップされている社会的テーマの作品の概要を一瞥してもわかるだろうと思う。

ご本人の公式サイトもあるので、興味ある方は以下をご覧ください。

Larry Gonick (wikipedia)

Larry Gonick History, Science, Narrative, and India Ink

私は、日本人でそう宣言する人が何人いるのかまったくわからないが、Larry Gonick のファンの一人であることを、ここに記しておこう。

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