開高健のエッセイ

本の話

最近、偶然に手にすることが続いたせいで、立て続けに開高健のエッセイ集と対談集を数冊読むこととなった。

大阪出身の著名な作家は何人もいるが、これほど、気取らず、鋭く、かつ多方面に渡って書きまくった作家は珍しいのではないか。同じ大阪人として、思わず大阪弁で「おっさん、ようこんなけいろんなオモロイことを、これだけしゃべって、笑って、書きはりましたな」と言ってみたくなる。

かつて開高は「24金の率直―オーウェル瞥見」というジョージ・オーウェル論を書き、それが角川文庫版の翻訳『動物農場』に付されていたが(開高は後に自身でもこの作品を翻訳している(ちくま文庫))、その「24金の率直」という評言は開高にもあてはまる、と私は思う。

試しに『ピカソはほんまに天才か』(中公文庫)に収められた表題作を読んでみてほしい。美術館巡り(ちゃんと本物を自分の目で見ている)、他の作家との会談から得た教示、いくつかの伝記や研究書への目配り……でも、最後に頼るところは、自分の眼と実感なのだ、それを偽っては話にならん、という腰の座った闘志がこちらに伝わってくる。この気取りのない、居丈高でもない、むき出しの感じが、どのエッセイや対談にも共通している。

いくつもの出版社からいろいろに体裁を変えて、たくさんのエッセイ集が繰り返し出されたようだから(そのほとんどは今は絶版だが)、古書店などで目にする機会も多いだろう。一度手にとって眺めてみてはいかがだろうか。

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