マスク美人

生活

コロナ禍で、道行く大部分の人が常にマスクをするようになって久しい。今はそれがかなり収まってきているが、最近の感染者の増加もあって、また増えてきている感じがする。

コロナ禍の真っ最中は、私はマスクをすると眼鏡が曇るのがとても嫌で、近くに人がいない(もしくは通らない)時には、マスクを外すか、「鼻出しマスク」に常に切り替えているが、それ自体も煩わしく感じるので、「いつまでこなんことが続くのだろう」と憂鬱になっていた。

講演をする時も、本当は会場にいる参加者との距離が適当にあれば、マスクを外しても問題ないと思ってはいるのだが、実際に外してしまうとそのことで「無神経な講師だ」と思われたり、話に集中してもらえなかったりする恐れがあるので、つけたままで話していた。

私はもともと声が大きくて50人くらいまでの中規模の会場ならマイクを使わなくてもまったく平気だ。そもそも、スピーカーを通した自分の声とその響きが嫌いなので、これまでできるだけマイク無しで通してきた。ところが、マスクを着けたままだと多少声がこもるようになるから、いつもより少し大きめの声でしゃべることになる。空気が乾燥していると、そのことで喉を傷めやすくなるので、時々水を飲んで喉を潤しながら……というのがまた面倒で、ちょっと憂鬱になるのだった。

だが、周りがマスクを着けている人だらけになったおかげで、楽しませてもらったことが一つだけある。それは「美人顔」がぐんと増えたことだ。街なかや電車、そしていろいろな会場で目にする女性で、思わずチラッと目をやって「キレイな人だな」と感じてしまうのは、まあ言ってみれば、今まで100人に一人くらいの感じがあったのだが、それがマスクを付けるとで、10人に一人くらいになった。

もちろん、私の側の勝手な「想像」が「美人顔」を生んでいるわけだが、それにしても、そうとはわかっていても、実際に、やたら多くの美人がいる、と感じてしまうのが面白い。女性の後姿だけをみて、思わず勝手に自分好みの「美人」を想像してしまうのは、おそらく多くの男性が経験していることだと思うが、この生理的に(?)刷り込まれた「妄想」力が、マスク顔に対して大いに発揮されているところが、面白い。

道行く多くの美人につい気を取られて、クルマに轢かれないように注意しなければ……。

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