「生(ライブ)」か「複製」か

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前々回に、録音・録画メディアの話をしたが、そのことに関わって浮上するのが、「生(ライブ)」か「複製」か、という問題だ。

家にいながら楽しむことの手軽さが、大量消費(購買)を前提にした鑑賞を成り立たせている。複製の精度と再生のコストパフォーマンスが上がれば上がるほど、「生」から離れていっても、より臨場感のある鑑賞が可能となる。

私の場合で言うと、金と時間の余裕がどれだけあるかでほぼ決まっていくることになるのだが、年間に通う回数の平均的なところ言うと、美術展2,3回、映画2,3回、演劇数回、音楽会数回といったところだ。もしこれに、家で美術書を眺めている時間、映画をTVモニターで観る時間、録画した演劇番組を再生して観る時間、スピーカーであれヘドフォンであれ音楽を再生して聴く時間を対比させれば、美術、映画、演劇で数倍から10倍、音楽にいたっては数十倍にはなるだろうと思う。

もし、ライブに足を運ぶ余裕が極端になくなって優先順位をつけざるを得ないとなると、その筆頭に来るのは、はやり演劇だろうと思う。TV番組で放送される枠がNHKBSの「プレミアムステージ」しかなく、それも月1本か2本程度しか流れないから、ということもあるが、何と言っても、劇場で俳優たちの生身の演技を目の前で観ることほど強烈な生々しさを感じ取れるものは他にはなく、映像による再生ではほぼ味わえないからだ。ライブでしか得られないワクワク感とゾクゾク感が、私にとっては演劇が一番著しい、ということなのだと思う。

「ライブ」など存在しないに―ごくまれに朗読会形式のライブのイベントがあるが―ラジオドラマが、演劇と似たワクワク感・ゾクゾク感を感じさせるものを持っているように感じられるのだが、これはなぜだろう?

TVのドラマは、よっぽど評判になって後から再放送された評価の高いものしか観ない、と言っていいくらいだが、ラジオドラマは中学生の時から週1回の土曜日の夜の番組(今なら、NHKFMの「FMシアター・オーディオドラマ」)をほぼ欠かさず聴いている。大半が「ちょとなあ……」とため息が出そうな程度の作品であるのは残念なのだが、年に2、3本は、劇場での興奮に近いものを感じさせてくれる秀作がある。そんな作品に巡り会えることを期待して聴き続けている。

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