指揮者なしで第9

音楽

先ほど観終わって、大いに感激したNHKの番組を巡って。

ご覧になった方も多いと思いますが、「指揮者なしのオーケストラ 第9に挑む!」です。

TV画面での視聴という制約はあるものの、私がこれまで聴いた第9の最高の演奏、といえるものでした。

思えば、中学1年生の時にこの第4楽章を初めて通して聴いた時に、とりわけあの543小節からのオーケストラとユニゾンの合唱によるトゥッティ(tutti)には心臓が破裂しそうになるくらいに感激して以来、何度聴いたかわからなほどの曲ではあるのですが―もし「明日オーケストラのメンバーにしてやる」と言われたら、間違いなく、「では第9の第2楽章のティンパニーを叩かせてください」と言うだろうほどの曲ですが―、意外にも、「なんだかちょっと謎のような深みを持った第1楽章―実際私が「やっとこの楽章がわかった」と思えるのに10年ほどかかりました―に比べて第4楽章はあまりにも芝居じみていて、居座りが悪いのではないか」とずっと思っていましたので、聴き終わっても「どうせ大げさな曲なんだから、フン!」という気持ちがどこかに残るように感じていたのです。

それが、「そうか、この大盤振る舞いの大出血もまたベートヴェンなんだ」と納得するようになったのは、ここ数年のことなのです。

NHKの番組での演奏家の方たちは、指揮者なしで複雑な音楽を奏でる際の、瞬時の乱れも許されない大人数のアンサンブルがいかにして可能になるのか、という挑戦が生む緊張感によって、高い次元での「一体感」を演奏に生み出すことに成功していて、それがマルチ画面での映像を通してこちらにもひしひしと伝わってきました。このようなことができるのだ、という驚きとともに、ベートヴェンが第9に込めた思いが今まで以上に伝わってくるように感じることとなりました。

クラシック音楽がお好きな人なら、文句なく興味深い番組になっていると思いますので、再放送があれば、ぜひご覧になっては、と思います。

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