「あなたにとってこの世で一番美しく哀しい音楽は?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。
「そんなの決められるはずがないではないか」―そのとおりなのだけれど、それでもあえて選んでみると、私には、昨年生誕150年を迎えた、モーリス・ラヴェルの2つのピアノ協奏曲のなかの叙情的部分(ト長調のコンチェルトの第2楽章、左手のためのコンチェルトの終わりのカデンツァの部分)になるのではないか、という気がする。
先日NHKのラジオで、作曲家・ピアニストの加藤昌則さんがパーソナリティを務める「鍵盤のつばさ」でラヴェルの「ピアノ協奏曲 ト長調」を取り上げていたが、加藤さんもこの2楽章を「実況中継」されている間に感極まって泣いてしまうのではないかとこちらが感じるほど、深い思い入れを語っておられた。
ピアノ協奏曲の名曲は数しれないほどあるし、極めつけの名曲も50作品はくだらないだろうと思う。時々、「やっぱりラフマニノフの3番だよな」とか、「シューマンの曲のこの高揚感は何ものにも代えがたい」とか「いやー、モーツアルトのこのウキウキ感は最高」とか、「いったい何回聞いただろう、矢代秋雄の協奏曲を、でもまったく毎回新鮮だ」とか……いろいろな思いを名曲たちに寄せてみるのだが、そこにいつもラヴェルが「ドヤ顔」で控えていて、改めて聞いてみると(特に「左手のための協奏曲」には)、ねじ伏せられてしまうことになるのだ。
◆おすすめ
ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調 アルゲリッチ / アバド Ravel Piano Concerto in G Major


