本の話

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古本悲(秘)話

古本を手にして、本の中身ではなく、別のことで心にひっかかってしまう事柄がいくつかある。 まずは「献本」のしおり。これが挟まれたまま古書店に出ているということは、献本されたその人はこの本を読んでいないのだろうと推測される。ああ、哀れなるかな、...
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『アトム博士』シリーズ

古い本だが、科学入門漫画本として一時期話題になった『アトム博士……』のシリーズのうちの一巻、『アトム博士の電磁気学入門』を読んで、ちょっと驚いた。 石ノ森章太郎が漫画の「監修」をしているのだが、それは関係ない。というより、絵柄は石ノ森タッチ...
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『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』を読んで

戦争の理不尽さは、罪のない民間人や子どもを巻き添えにすることに一番あらわれていて、現地報道の多くもそこに目を向けることになるが、長期化した場合に、駆り出された兵士たちにどれほど悲惨なことが起こるかについても、言い落すわけにはいかないだろう。...
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世界文学の名作の子ども向けリライトのこと

もし、『ガリバー旅行記』や『ドン・キホーテ』や『西遊記』など、数多ある世界文学の名作のそれぞれについて、いったい何人くらいの人に読まれてきたか、その移り変わりを数字で出すことができたとすると、なかなか興味深い結果がみえるだろう。ただ、「子供...
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魯迅と今の中国

中国の文学者である魯迅がもし生きていたら、今の中国をどう観て、どう語るだろうか。中国共産党は魯迅を「革命の聖人」と祭り上げてきたが、魯迅がそれを喜んで受け入れるとはとても思えない。権力や「正しい人」や奴隷的精神に魯迅ほど鋭い刃を向けた文学者...
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『全集 樋口一葉』を手にして

もしあなたが日本の近代文学が好きで、古書店で安い値段で見つけたら、買っておくといいかな、と思える本の一つが、『全集 樋口一葉』という小学館の4巻本である(そのうちの3巻が小説と日記にあてられている)。文語文をすらすらと読めるようになるには、...
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開高健のエッセイ

最近、偶然に手にすることが続いたせいで、立て続けに開高健のエッセイ集と対談集を数冊読むこととなった。 大阪出身の著名な作家は何人もいるが、これほど、気取らず、鋭く、かつ多方面に渡って書きまくった作家は珍しいのではないか。同じ大阪人として、思...