私塾での2年を経て

教育

大学入試の季節だ。

2年前から始めた、市民科学研究室の事務所を使っての私塾で、通っている生徒さんの一人が受験の時期を迎え、無事、志望校・志望学部に合格することとなった。

学校のそれぞれの教科で課される試験のために、問題集などの問題の解き方を教える(いろいろ手がかりを与えて、自分で解けるように導く)ということももちろん行ったが、それとは関係なく、最初にいろいろ話した際に「宇宙に興味がある」生徒さんであることがわかったので、「それじゃ、英語と物理を鍛えなきゃね」ということで、2つの特別な課題をこなしてもらった。

ひとつは宇宙科学に関連した映画『オデッセイ』のシナリオを映像と音声だけを手がかりに、全部聞き取って書き取ること。むろん高校生には難しすぎる作業だが、何と言っても、その映画が好き、ということは、ストーリーが頭に入っているし、「聞き取りたい」という意欲もかきたてられているわけなので、その難しさを乗り切っていける可能性がある。そこで、シナリオの穴埋め問題を私が作って毎回それを埋めてきてもらうことにした。「聞き取れるようで聞き取れない」単語やフレーズを、話の流れやそのシーンでの人物のやりとりなどから推測していく、ということを繰り返した。1年ほどかかったが、最後の台詞にまでたどり着いた時は、「やったね!」と達成感も一潮という感じだった。

もうひとつは、卒業論文の提出が学校から課されていたので、その対応だ。半年間ほど「どんなテーマにしたいか」をいろいろ議論して絞り込んでいくことになった。「はやぶさ2」の成功に刺激を受けたのか、結局、探査機「ボイジャー2」の木星通過時の軌道はどのような力学計算のもとに導かれたのか、その原理(スウィングバイ航法など)を直感的に理解できるような模擬的な実験例を作る、ということになった。NASAのデータベースにアクセスしたり、国立天文台にメールしたり、となかなか大変だったけれど、高校生としては立派なレポートが出来上がったのではないかと思う。

というわけで、「宇宙」にはまったく詳しくない私ではあるが、この2つの「指導」をとおして、英語での宇宙業界の用語や言い回し、衛星の慣性飛行のメカニズム、などの面白さを味あわせてもらうこととなった。

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